知る人ぞ知るDAW、MuTools社のMuLabについて

MU.LAB 9 CREATIVE MUSIC STUDIO

あなたはベルギー生まれの音楽制作ソフト、MuLabを知っていますか?

MuLab 9 のスクリーンショット

Mulabはいわゆる、DAWやDTMソフトと呼ばれる音楽制作をするソフトです。ベルギーのMuTools社から発売されています。自由度が高くて触っていて楽しくて、アイデアが湧いてくる、とてもすばらしいDAWなのですがネットを検索してみた感じでは、ほとんど使っている方がいません。

もっとユーザーが増えたら嬉しいなと思うので、今回はMuLabってよいなと思うポイントを主に3つに分けて紹介させて頂こうと思います。

この記事を読み終わる頃にあなたは、MuLabを完全に把握した状態になっていることでしょう。

Mulabのとてもすばらしいところ三つ

一つ目は自由度の高さ

このソフトは、最初起動した時、とてもシンプルなDAWという感じなんですが、実は全体がモジュラーシンセと呼べる状態になっています。

ここで言うモジュラーというのは、音を出したり、音を加工したり、音を鳴らす指示を出したりといった、色々な機能を持ったモジュールをバーチャルなケーブルで配線して、オリジナルなシンセサイザーやエフェクターを作ることができる環境です。

MuLab 9 のモジュラーGUI画像

このモジュラーの世界では、MAX/MSPや、Jeskola Buzzや、NativeInstrumentsのReaktorが有名だと思いますが、MuLabの場合は、最初から用意されているモジュールを自由にパッチングできるという感じで、モジュール自体を一からプログラミングして読み込ませたりという機能は省かれてます。

パッチングの際に面倒な、モノラルとステレオの違いも自動判別して処理してくれる、手軽に扱えるモジュラー環境になっています。マウスやタッチパッドでバーチャルなケーブルを繋いでいくだけで、結構かんたんにオリジナルなシンセサイザーやエフェクターを作ることができちゃいます。

シンセサイザーによく使われるステップシーケンサーのモジュールもありますが、それだけではなくDAWのメインのMIDIシーケンサーやオーディオトラックの部分も、コンポーザーモジュールという名前で用意されています。さらに複数のコンポーザーモジュールを同じプロジェクトに読み込めるという非常に自由度が高い作りになっています。

そしてMuLabが真に自由だなと思う点として、モジュラーシンセがメインとなったソフトではあるんですけど、最初からサンプラーや、シンセサイザーのパッチが色々と用意されてる上に、外部のVSTプラグインも読み込むことができるので、モジュラーの部分を触りたくなかったら別にそこは触らなくても使えるようになっています。

MuLab 9 のインストゥルメントである MuDrum の画像

すぐに最初から入っているパッチを使って、曲を作り始めることができます。つまり、カスタマイズが出来る自由だけでなく、カスタマイズしない自由もMuLabにはあるのです。

二つ目は、ライブマトリクスとMuClips

ライブブマトリクスはMuLab9から搭載された機能で、既にDAWを使っている方向けに言うと、Ableton Liveのセッションビューのような機能です。

MuLab 9 のライブマトリックスのGUI画像

セッションビューというのは、音楽のフレーズやループを、タイミングを同期させたまま、再生を止めずに重ね合わせてジャムセッションのように再生することが出来る機能です。

リアルタイムというところが肝心で、一つのベースのループを再生しながら、次の小節の頭で16ビートのドラムループの再生を重ねよう、次の小節の頭で、G7コードのバッキングフレーズを鳴らそうといった事が、再生を止める事なく出来ます。打ち込み系の音楽でもリアルタイムでライブの盛り上がりに合わせて展開を変えたりアレンジする事ができます。

そしてMuLabのLiveMatrixはAbletonのSession Viewがそうであるように、ライブパフォーマンスだけでなく、制作時にも便利な機能です。例えばアイデアをベースライン1フレーズだけ思いついた時に、とりあえずそのフレーズを録音してループ再生させて聴きながら、フレーズを重ねていったりリズムやコードのパターンのアイデアをいくつか録音して、再生を切り替えながら、どの組み合わせが良いのかを簡単に試すことができます。

このいわゆるセッションビュー的な機能は、Ableton Live、Bitwig Studio、Maschine、Digital Performer、Logicなど様々なDAWに搭載されるようになった流行の機能ですが、MuLabは特に起動が早いソフトなので、アイデアを素早く手軽に記録できるというメリットがあります。

人気ソフトのAbleton LiveはMAXを統合することでモジュラー環境を提供していますし、BitwigStudioもバージョン3からは、全体をモジュラーシンセのように使える方向に進化しています。

一方MuLabは元々モジュラー環境が核となったDAWでしたが今までセッションビューのような機能がありませんでしたが、今回MuLabにLIVE MATRIXがついたことで、MuLabはAbleton LiveやBitwig Studioと肩を並べるDAWになった、とまで言うと少し言い過ぎですが、非常に強力なオルタネイティブになりうる可能性があると思います!

そしてもう一つの機能MuClipですが、これはMuLab 9よりも前からついていた機能で、MIDIシーケンスとそのターゲットとなる音源モジュールを一つにまとめて、プリセットとして読み込めるようにしたもので、Ableton LiveのALCファイルと似た機能になります。

MuLab 9 の新機能 MuClips のGUI

例えばサンプラーモジュールにハイハットの音を読み込んで、シーケンストラックを繋いで16ビートのハイハットフレーズを作ったものを、一度MuClipとして保存しておけば、別のプロジェクトで、ハイハットのサンプルとMIDIシーケンスの両方を同時に読み込んで再利用する事ができます。この保存のしかたも簡単でMuLabのプロジェクトブラウザに打ち込んだMIDIシーケンスをドラッグアンドドロップするだけです。

非常に便利ですね。

そしておすすめポイントの三つめは使い易さ

MuLabは非常に起動が早いです。VSTプラグインを起動時にチェックしてないというのもあるんですが、起動は一瞬です。起動の待ち時間にコーヒー入れられそうなDAWもありますが、MuLabならティファールでお湯が沸く前に一曲完成するんじゃないかなと思うくらい早いです。

バックアップも簡単で、基本的にはMuLabが入ってるフォルダごとコピーするだけです。作者の方によるとレジストリを使っていないとのことなので、ZIPファイルを解凍してフォルダができたら、そこにあるものがMuLabのプログラムの全てです。あとはオリジナルパッチや作成したプロジェクトを保存する時に、気をつけてMuLabフォルダの中のユーザーフォルダに保存するように気をつけていればバックアップがとても簡単になります。

そして、画面も非常にシンプルで余計なものが無くてスッキリしています。ピアノロールのズーム機能、表示サイズも見やすくてラップトップでも見易いと思います。

MuLab 9 のシーケンスエディターのGUI画像

そしてシンプルで簡単とは言いましたが、キーボードのショートカットはとても細かいところまで設定できるので、初心者にとってもDAWに慣れた人にとっても使いやすいと言えるんじゃないでしょうか。

そして四つめは手頃な価格!

MacでもWindowsでも使えて、値段もお手頃で79ユーロ…今だと日本円で1万円ちょっとです。

低価格帯のオーディオインターフェースよりも安いですね。

MuTools社のサイトの販売ページのスクリーンショット

MuLabには通常のMuLabに加えて、MuLab自体を別のDAWにVSTプラグインとして読み込ませることができるMuLab Pluginというのが存在していて、そちらは現在78ユーロ、両方買う場合はセットで119ユーロで提供されています。

ちなみにMuLabには無料版もあるんですけど、最大で5トラックしか使えなかったり、VSTが読み込めなかったりと、かなり制限がきついのでお試し版だと思ったほうが良いと思います。

MuLabの弱点

ここまでは良い点を挙げたので、弱点かなと思う点もあげます。

  • VSTプラグイン対応となっていますが、現時点ではVST3には対応していなくて、VST2までの対応になっています。MuTools社は、おそらくプログラマーの方が一人でやっている会社だと思うので、対応には時間がかかると思います。
  • オーディオ編集はあまり得意ではありません。オーディオトラックを大量に録音して、良いテイクを繋ぎ合わせるような作業や、オーディオの細かい修正、編集作業をするのにはあまり向いてないです。
  • ミキサー部分は、例えばモーターフェーダーを使うような、MCU( Mackie Control Universal)とかHUI (Human User Interface)には対応してません。
  • 付属のライブラリは電子音楽に偏っていて、とてもリアルな大容量ピアノサンプルとか、めちゃくちゃハイクオリティなリバーブなどは付いてきません。

モジュラーシンセにセッションビュー付きのMIDIシーケンサーとオーディオトラックが統合されたソフトがMuLabだと思ってください。

付け加えて、ある程度DAWを使っている方向けに、気になりそうな特徴を挙げておきます

  • PDC、いわゆるプラグインディレイ補正は、APLC (Automatic Plugin Latency Compensation)と言う名前で搭載されています。なので、モジュラー編集画面でVSTプラグインを自由にパッチングしても、自動でレイテンシー補正をしてくれます。
  • ショートカットは非常に細かく設定できますが、マクロとかスクリプト機能は無いです。
  • REXファイルはサポートされています。自分では試してないですが、書き出しもできるそうです。

最後にまとめると、MuLabは自由で気軽で楽しいDAWです

初心者の方がパソコンでの音楽制作にチャレンジしてみるのにもおすすめですし、DAWをかなり使ってきた方が最近の多機能なDAWは制作作業がつらいな、煮詰まったなと感じた時に、初めた頃の気持ちに戻って楽しめるソフトなんじゃないかなと思うので興味を持った方は試してみてください。

なお、全然使いやすいと思えなかったり、モジュラー沼にハマったとしても僕は一切責任を取れないのでご了承ください。

と言うわけで今回は最近お気に入りの音楽制作ソフトMuTools社のMuLabについてご紹介させていただきました。

もし質問等ありましたらコメント欄へ宜しくお願いします。

今回紹介しきれなかった、機能や特徴もいっぱいあるので、続編で紹介していけたらなと思ってます。

なので、ご興味を持っていただいた方はブックマークをよろしくお願いいたします。

ではまた!

この記事で紹介したMuLabのサイトはこちら https://www.mutools.com/

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